失語症のある方と話すとき、「どう接すればいいかわからない」「うまく伝わらなくてお互いに辛くなってしまう」と感じているご家族は多いです。
失語症は「ことばが出にくい・理解しにくい」障害ですが、だからこそ、話しかける側の工夫がとても大切になります。
この記事では、日々の会話をすこし楽にするための具体的なコツを10個、言語聴覚士がわかりやすくお伝えします。
会話のコツ 10選
「今日どうでしたか?」より「今日は楽しかったですか?」のように、選択肢がYes/Noになる形にすると答えやすくなります。「ご飯は何が食べたい?」より「カレーにしようか?ラーメンにしようか?」のように、選択肢を提示するのも効果的です。
早口や、たくさんの情報を一度に話すと処理が追いつかなくなります。いつもより少しゆっくりしたペースで、一文ずつ区切って話しましょう。大声にする必要はありません。耳が悪いわけではないからです。
「今日デイサービスどうだった?それで夕ご飯何が食べたい?お風呂は何時にする?」——一度にたくさんのことを聞くと混乱してしまいます。質問は1つずつ、前の返事を受け取ってから次を聞くようにしましょう。
失語症の方は「ことばを探す時間」が必要です。少し沈黙があっても焦って話しかけずに待ちましょう。答えが出てきたときの喜びが、次の会話への意欲につながります。「ゆっくりでいいよ」のひと言も安心につながります。
「え、えーと……」と言いかけたとき、つい「○○のこと?」と先に言ってしまいがちですが、先回りしすぎると練習の機会を奪ってしまいます。本人が言葉を見つけようとしているプロセスをそっと見守りましょう。どうしても伝わらないときは、絵や文字を使って確認しましょう。
言いたい言葉と違う言葉が出てしまうことがあります(例:「いぬ」と言いたいのに「ねこ」と出てしまうなど)。毎回訂正すると自信をなくしてしまいます。意味が通じた場合は「そうですね、犬ですね」と自然に繰り返す形で受け止めてあげましょう。
ことばだけに頼らなくて大丈夫です。カレンダーを見せながら「今日は○○の日です」と話したり、紙に書いたり、指差しやジェスチャーを使うと格段に伝わりやすくなります。絵カードや写真も便利なコミュニケーションツールです。
失語症の方は、複数の音が混ざると情報を処理するのがとても難しくなります。会話するときはテレビやラジオを消すなど、できるだけ静かな環境を作りましょう。目を見て、1対1で話すことが大切です。
うなずいたり、「うん、うん」と相槌を打つだけで「ちゃんと聞いてもらえている」という安心感が生まれます。話しかけるときは必ず正面から、目を合わせて話しましょう。背中越しや遠くからの声かけは避けましょう。
ことばが出にくくなったからといって、赤ちゃん言葉や子ども扱いは禁物です。感じること・考えること・わかることはちゃんとあります。「〇〇したい?えらいね〜」のような話し方は、かえって自尊心を傷つけてしまいます。普通の大人として尊重した関わりを大切にしましょう。
うまく伝わらなかったときは?
どれだけ工夫しても、うまく伝わらない日もあります。そんなときは、一度会話をリセットして別の話題に移るのも一つの手です。「また後で聞かせてね」と穏やかに伝えることで、お互いの焦りを和らげることができます。
- ✕「さっきも言ったでしょ」と繰り返しを責める
- ✕「もういい」と会話を打ち切る
- ✕本人の前でまわりの人に「この人は話せないので」と説明する
- ✕早く答えさせようとプレッシャーをかける
家族だからこそ、無理しなくていい
毎日一緒にいる家族だからこそ、「うまく話せない」状況に慣れてきてしまったり、逆に疲れを感じてしまうこともあります。
「完璧にやらなきゃ」と思わなくていいです。コツを意識しながらも、しんどいときは無理せず、専門スタッフに相談しましょう。
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